Propの小型飛行機Impression
PA-32R-301T (Piper Saratoga II TC)

現Service Centerで手がける機体では、最も一般的な飛行機の一つです。通常の飛行訓練に使われるPA-28-181 (Archer) と比べると機体は大きくなりますが、Piper社製の飛行機に特徴のSolidなSteering Systemのお陰で、地上での取り回しはとても軽快です。狭い駐機場をTaxiingするときにも、翼端からの十分な間隔を得られるため、不快な緊張感を強いられることもありません。ただPiper伝統の、Rudder Trimが床近くに取り付けてあるのはどうかと思います。地上走行中にも使いたい時がありますが、手を下まで伸ばすと前方が全く見えなくなり、怖い思いをすることが多々ありました。
Engineは、38in-Hg/2500rpmで300馬力を発揮する、Textron Lycoming TIO-540-AH1Aを装備しています。始動性がよく、取り扱いの楽なEngineです。Turbochargerが付いているため、TC無しのPA-32R-301 (Saratoga II HP) と比べると音が静かなのも助かります。不満はCowl Flapが装備されていないところです。真冬の早朝などではOil Temperatureが上がらず延々と暖機運転をすることになります。こんな時にCowl Flapを閉じられたらと思いました。Oil Temperatureが低いときは、Over Boostに注意しなくてはいけません。離陸時にはOil Tenperatureを確認、そしてFull Powerにする時はMAP(Maniforld Absolute Pressure) が38in-Hgを超えないように注意します。始動性のよいEngineですが、Engine Start Checklistの内容にはちょっと疑問が。通常Electrical Fuel PumpはPrimeが終われば切りますが、このChecklistによると始動から、離陸して巡航に移るまでずっとOnのままになってしまうのです。試しにこの方法で掛けてみたことがありましたが、案の定Mixtureがかなり濃い状態での始動となりました。Electrical Fuel Pumpの作動状態を見るためにも、Prime終了後にOff、離陸前にOn、離陸後にOffが正しいのではないかと思います。

操縦席は小型飛行機としては広くゆったりとしています。PA-32R-300 (Piper Lance) ではMaster/Light Switch類がPilotの左側のPanelに横向きにありましたが、新しいPiper機ではFront Window Shield上に並ぶようになりました。これによってCo-Pilot席からでもEngine Startを含めた操作が可能になりました。見た目にも、天井のSwitch類を押してのEnigne始動というのはなんとなく大型機の雰囲気を出していて、ちょっと見栄をはりたいPilotには好評のようです。Engine Instrumentは、DDMP(Digital Display Monitoring Panel) とAnalog Instrumentが並んでいます。私のような古いAnalog派と、新しいDigital派どちらにも対応するようにとの配慮でしょうか?Computerを介した機器は、故障を避けるためにEngine始動時にはOffにすることが原則ですが、このDDMPやEngine計器類は当然常にOnの状態です。航空機用電子機器は壊れやすいと固定観念があって信用していなかったのですが、今まで故障した物を一度も見たことがないので感心してしまいます。Instrument Panel中央には、人気のGarmin GNS530とGNS430が装備されています。Autopilotと連動させて目的地までPoint to Pointで飛ぶことが一般的です。TransponderはGermin GTX327、最近はMode S対応のGTX330が増えてきました。これによりGNS530/430の画面上で他の航空機の位置と高度を見ることができます。実際はあまり正確ではなく、見ていると、飛行機の位置が左から右へと飛び回ったり、突然二つに増えたり消えたり。あくまで安心感を得るためのものと考えるべきでしょう。

DoorはPiper伝統の、右側の翼上から乗る方法です。正直言って、乗ったり降りたりを頻繁に行う整備には不便です。Pilotの人にも、左に座るのに右からわざわざ入るのは面倒かと思います。Doorの数を減らすことによって機体が軽くできるのは確かでしょうが。操縦席後方には4つの席が向かい合わせに備わっています。Passennger Doorは左側にあります。天井は少し低いですが、小さな収納可能なTableが付いていてなかなか快適です。
この飛行機のEngine Cowlには不満があります。上下に分かれる形で、上は簡単に取れますが、問題は下側。Cowl周辺を多くのScrewがぐるりと閉まっていて、外すときには毎回ため息がでます。重さもかなりあり、一人で傷をつけずに外すことはほぼ不可能です。仮にSemi-Synthetic Oilを使っていても、Oil交換は50時間未満で一度行うことが基本です。しかし、50時間ごとのOil交換で毎回このCowlを外していたら、果たして2000時間までもつのだろうか?と疑問になります。せめて左下側に、Bonanzaのような小さなPanelがあったら、下側Cowlを外さなくてもOil Sction ScreenにもOil Drainにも届くから楽なのにと思います。これで30分は節約できるし、傷をつける危険性もなくなります。Piper Arrowと違って、Nose Gear Doorは機体に直接付いています。Nose Gear DoorのActuatorを外す必要がないのは助かりますが、実はこれも厄介です。下側Cowlを外すときに、どうしてもCowlがNose Gear Doorをこするため、傷がついてしまうのです。私たちはそれを防ぐためにTapeを張っていますが、実はこのTapeを剥す時に一緒に塗装も剥れてしまったり。ゆっくりと慎重に剥す必要があります。
Tire PressureはNose 35psi、Main 38psiですが、この圧力ではどうもTireがつぶれて見えます。試しに3-5psi高めにしたら少しよい形に見えます。人も荷物も乗せていない常態では最低でもこうでないとと思います。
見た目も滑らかで経済性も高く、Owner/Pilotには好評のようです。もし私も金銭的余裕があったら是非一機欲しいです。
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