Propの小型飛行機Impression
DA20-A1 (Diamond Aircraft Katana)

最初にお詫びですが、今回のこのImpressionはPilotの目から見たものになってしまいます。この飛行機には、2000−2001年にNew York州のLong IslandのSUNY (State University of New York) で飛行教官をしていた時に乗っていました。
最初にこの飛行機を見たのは1997年ごろ。その時はなんて頼りない飛行機なのだろうと思いました。この飛行機の外観は今までの訓練機のどれ一つにも当てはまりません。先の細い小ぶりなEngine Cowl、細長い翼、Rivetが打たれていないFRPの機体、あまりに頼りなげな細い尾翼の付け根、軽い静かなEngineの音…。第一印象はあまりいいものではなかったように思います。
見慣れると最初の異様な印象は無く、その細い機体がとても格好よく見えます。強靭なCarbon/Glass FRP製のSemi-Monocoqueの機体ですが、暑い夏場の飛行では気をつけないといけません。機体の温度が55度Cを超えると、強度が下がるために飛行は禁止になります。気温が30度Cでも機体はさらに暑くなっているのが常ですので、夏場は操縦席後ろのIndicatorが赤に変わっていないことを確認します。
飛行前点検は大体は他の訓練機と一緒です。注意するのは翼先端の下部とEmpennage (尾部) の下です。翼先端は、その長い翼から横風着陸などで滑走路に擦ってしまうことがあり、損傷がないか確認します。(私は生徒との訓練中にこれを怠って、痛い思いをしました。この失敗談は後々…) 次のEmpennageは、この飛行機の弱点とも言える部分です。離着陸の訓練ではHard Landingがつき物ですが、その時にEmpennageを強打したりすることがあります。もしひびが入っていたら、Hard Landingを疑います。この傷が原因で、飛行中に尾翼が取れてしまったら…なとど考えると怖いです。今までにそのようは事故はありませんが、その細いEmpennageは少し不安があります。
EngineはExperimentalの飛行機などで人気のRotax 912です。ほとんどの訓練機がLycomingやContinentalの空冷Engineを採用していますが、これはCylinder Headのみ液冷の半液冷Engineです。点検ではもちろん冷却水も確認します。冷却水がCylinder Headを覆っているため保温効果があり、Shock Cooling (出力を急激に絞ることで、Cylinder Headが短時間で冷やされること。Pistonの運動に支障が出たり、Crackの原因になる。寒冷下の飛行では、出力調整は特に慎重に行う必要がある。) の心配がないことは、極寒時に飛行訓練をする私達にとって嬉しい点です。
ここでEngine Oilの量の確認の仕方です。前の飛行から2-3時間くらいでまた飛び上がるという時は問題ありませんが、週末誰も飛ばずに月曜日の朝に飛ぶ時などは注意です。このEngineの潤滑方式はDry Sumpで、Engine Oilは時間が経つとOil Tankから流れてEngineに戻ってしまうので、Tankだけを見てOilが少ないからと足してしまうと入れすぎになってしまいます。少ないと思っても、30秒ほどEngineを回して、Engine OilをOil Tankに送ってからOilを確認します。ただ、この回している時にEngine Oil Pressureがあることは確認してください。ひょっとしたら本当にEngine Oilが空かもしれません。そして使うEngine Oilは自動車用の物です。航空機用に比べて値段が安いので、費用的にも嬉しいです。
真冬は昼でも-10度Cを下回る時もあるNYですが、その季節の始動には苦労します。気温が氷点下になると、Engineに取り付けられているEngine Pre-Heaterを外部電源につないで、最低30分は暖めないとEngineが掛かりません。それでも時々掛からずに、訓練中止になったりします。このDiamond AircraftはCanadaの会社ですが、その寒い地方からの飛行機が寒さに弱いとは、ちょっと不思議です。
Propellerも変わり物です。5800rpm/80HPの小さなEngineですが、装備されているのはConstant Speed Propeller (Propellerの角度を自動的に変化させて、PropellerとEngineの回転数を一定に保つ) です。正直、この小馬力のEngineではConstant Speed Propellerの効果はあまりないでしょうが、巡航中に回転数を下げて静かに飛ぶこともできますし、何より操作の楽しさがあります。Propellerの点検方法は、手でPropellerをねじって、Pitchが変わることを確認します。
操縦席の視界の広さはすばらしいです。左右に300度近い視野が確保されています。これはそのまま安全につながります。乗り慣れてしまうと他の訓練機が嫌になってしまうほどです。この飛行機にはAutomatic Mixture Controlが装備されています。生徒にMixture (燃料と空気の混合比を調節する) の使い方を経験させられないことは残念ですが、本来は自動調節であるべきものであり、これが進化というものなのでしょう。Primerが装備されていない代わりに、自動車のようなChoke Leverを引いて始動します。そしてMixture Controlが無いため、止めるときはIgnition Switchを切って止めます。
Propellerの発生する音は他の飛行機と同じですが、Engineは明らかに静か、そして高回転です。このEngineにはReduction Gear (減速機) が組み込まれていて、TachometerはEngineの回転数ではなく、Propellerの回転数を指しています。Tachometerが最大回転数の2550rpmを指していても、実際のEngine回転数は5800rpmになっています。
Taxiingはまた特異で、この飛行機にはSteering Systemがありません。左と右のBrakeを使って方向を決定します。Cirrus Designの飛行機にも採用されている方式ですが、意外にも楽にTaxiingが出来ます。コツとしては、小さく回る時にはきっかけを作るためにBrakeを一瞬使い、直進時はBrakeを使わずRudderを早めに小まめに使います。心配していたBrakeの使用頻度はそれほど多くはないようです。
夏場のこの飛行機の地上運転は注意が必要です。冷却水の最大温度は302度Fですが、実際のところ250度Fを超えると冷却水が噴き出すことがあります。地上運転はとにかく短くすることが必要です。と言っても、実際は離陸待ちで30分なんてこともたまにあり、地上では常に風に正対させるようにします。間違って横風や背風にしてしまうと、風がうまくEngineを冷やせずにOverheatを起こします。この辺りはCowl Flapを装備するとか、何かしらの改良が必要かと思います。
TakeoffではFlapをTakeoff Position (15度) にします。不思議なようですが、No FlapよりもFlapを一つ下げたほうが離陸性能も滑空比もいいようです。Throttleの操作はゆっくりと行います。急激な操作をすると、Reduction Gearからのガクン!という音が響きます。大事にしなくてはいけません。巡航性能はとてもすばらしいです。仮に7500ftを飛行して、75%のPower Settingで燃料消費率が約4.4GPH、この時の巡航速度は120KTASにもなります。他の訓練機の180HP級の性能でしょうか。しかし、Cessna152よりも低燃費です。
滑空比の良さは、緊急時の強い味方です。ほとんどの訓練機がPower Offでの降下率が500-600ft/minであるのに対し、この飛行機は380ft/min程度です。まるでGliderでSoaringをしているかのようです。Approach時に高度を落とすためにForward Slipを使うことがありますが、残念なのことにその効果はほとんどありません。恐らく横から見た胴体が細く、あまりにも滑らかなことが原因でしょう。
Flap Positionの選択にも少し疑問があります。No Flap、Takeoffの15度、Landingの40度と、3段階に設定出来ますが、Cassnaのように途中で止めるということは出来ません。初期のApproachでは15度に設定しますが、滑空比が上がるためか高度はあまり落ちません。そして次の40度にすると途端に高度が落ちて、進入角度を維持するのに苦労します。40度には、Short Finalで使うように心がけます。Flapを25-30度あたりにもう一つ設定できたらいいのですが。
長い翼は滑空性能を高めていますが、欠点としてはCrosswind Landingの難しさがあります。着陸時に少し傾けただけで、翼端が滑走路を擦りそうに見えます。これは訓練中に生徒に何度も気をつけさせました。他の訓練機ではあまり必要としない感覚です。
飛行機としての性能は高く、教官の間では人気のあったKatanaですが、少し飛行に癖のある性格のために、飛行訓練にはあまり向かないかもしれません。今後もしばらくはCessna152/172が活躍するかと思います。事際に、私の生徒たちも単独飛行に出るまでに少し時間がかかりました。このRotax 912 Engineを装備したDA20-A1は生産が中止となったようですが、同じ機体でContinental IO-240B Engineを装備したDA20-C1が引き続き生産されています。
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