Propの小型飛行機Impression
PA-46-350P (Piper Malibu Mirage)

Piper Malibu Mirageは、Turbochargerを装備した、高高度を飛行可能な6人乗りの単発機です。与圧設備を備えているため、その圧力の許す限り、高高度でも酸素供給無しに快適に飛行ができます。この飛行機を最初に見たときの印象は、「大きい!」ということでした。Piper Saratogaも6人乗りではありますが、この飛行機の操縦席に座ったときの目の高さは2m50cmほど。まるで、Cessna 400 Seriesの双発機に乗ったような感覚です。単発機でありながらも他の機体とは違った雰囲気を出しています。

薄く細長い、まるでGliderのような主翼も印象的です。高高度を飛行する性能を追求したため、このような長い翼になったのでしょう。しかしこれによって、地上での取り扱いにはとても苦労する飛行機の一つになりました。これより大きい飛行機、例えばBeechcraft King Airなどでは、たいてい格納庫も整備場も広い誘導路に面したところにあります。しかし、この飛行機は大きくても所詮はPiston Engine装備の単発機、少々狭くても、通過可能である以上はTaxiingして移動しなくてはならないことがあります。駐機場の一番狭い場所をを通るときは、翼端から障害物までだいたい30cm。操縦席から見ると、ほとんどぶつかっているように見えます。狭いところでのTaxiingは毎回緊張します。

写真左: Engine左側。 写真右: Engine右側下部。
金色に見える四角い箱がIntercooler。Turbochargerによって圧縮された空気を冷却します。
その下のカタツムリ状の物はTurbochargerです。
Engineは42in-Hg/2500rpmで350HPを発揮する、Textron Lycoming TIO-540-AE2A Engineを装備しています。Engine左右にTurbochargerとIntercoolerが一つずつ置かれ、高出力を助けています。42in-HgのMAP (Maniforld Absolute Pressure : 吸気圧力) を初めて地上の試運転で見たとき、こんな強力なEngineが市販されていることに驚きました。Air Race出場のEngineではさらに高い数字も見たことはありますが。この機体のOil交換は楽な部類に入ります。下側Engine Cowlが左右で分かれるため、片方を外すだけで容易に作業が行えます。ただ、その他の整備、例えばMagneto交換やFuel Servo交換は、Engine後部とFire Wallの狭い空間にあって、とても苦労します。Piper Saratoga同様、機体前部のFire Wallが開く構造なのは嬉しいですが、その開口部が三角形で小さく、作業が限られます。あと数cmでいいから、もう少し大きくならないものでしょうか。一度、Engine後部のOil漏れを直す作業をしましたが、そのままでは作業が出来ないため、Engineを機体から取り外しての作業になりました。

写真左: Hartzell Composite Propeller。
雨や雪に弱いといううわさがありますが、そんなことはなく、信頼性の高いPropellerです。
写真右: 主翼に取り付けられたSpeed Brake。
この飛行機は、性能的なService Ceiling (実用上昇限度) は25,000ft以上、しかしなぜか性能表にはMaximum Approved Altitude (認可された上昇限度) は25,000ftとされています。それ以上上昇できるとしてしまうと、PilotはHigh Altitude Endorsement (高高度飛行の訓練修了の裏書) が必要になりますから、その辺りのことを考えたのでしょうか。350HPのEngineを装備する、この飛行機はどれだけ速く飛ぶのだろうと期待をしましたが、意外にもこの機体にはまだ力不足のように思えます。乗っていたのは、私よりも小柄な飛行機のOwnerと私の二人だけでしたが、2500ftの滑走路をほとんどいっぱいに使って離陸、その後も700-800ft/minの上昇率を維持することになっていました。まるで、荷物を満載した輸送機にでも乗っているような感覚でした。初期の上昇性能だけならば、Piper Saratoga II TCの方がいいでしょう。ただOwnerによると、10,000ftを越えた辺りからがこの飛行機の見せ場だそうです。上空での操縦感覚は、単発機とは思えない、ゆったりと安定したものでした。長い翼は慣性を大きいものとしています。主翼に付けられたSpeed Brakeは、早く速度を減らしたいときに便利です。気温の低い上空で、Shock Coolingを防ぎながらも素早く降下したい、そんな時に使えるでしょう。

他の新しいPiper社製の飛行機同様、操縦席の天井に主なSwitch類が並んでいます。Pilot/Co-Pilot両方に標準装備された飛行計器と、席の横壁に備えられたCircuit Breaker Panelと合わせて、他の小型機とは違った雰囲気があります。計器盤にはBendix/King社製のRadio、GPS、Auto Pilot、そしてWeather Radarが装備されています。この飛行機を乗りこなすには、このようなAvionicsを使いこなせることが必要になってくるでしょう。

出入り口は一箇所しかないため、操縦席と客室内を機内で行き来する必要があり、天井は同じ6人乗りのPiper Saratogaよりも高く、広い客室になっています。大きなEngineですが、飛行中の機内はとても静かで、これなら客室での会話も苦労しないのではと思います。

旧式Piper Malibuの中には、EngineをTurboprop Engineに換装された、通称Jetpropも存在します。高空飛行性能にはPiston Engineでも申し分ないのでしょうが、離陸上昇性能を求めたらもう少し出力があったほうがよいかもしれません。いずれ、500SHPのPratt & Whitney Canada PT6A-42Aを装備した、PA-46-500TP Piper Meridianについて書きたいと思います。

PA-46-500TP Piper Meridian
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