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この訳文は「奇跡の詩人」検証文献翻訳班の最終チェックを受けておらず、現状ベースの試験公開版です。最終チェック完了後に正式版として再掲されます。
facilitated communication(以下、FCと省略)を通じて行われたとされる性的虐待の告発2例に対する連邦裁判所において、ニューヨーク州判事2名がそれぞれ下した裁定では、FCを使ってなされた主張は、FCの正当性が確立されていないことを理由に証拠として認められなかった。
1つ目の裁判における申し立てでは、アルスター郡に住む発話不能の16歳の自閉症女性が、継続的に父親と祖父から性的虐待を受けているという告発をFCで行った。(ARRIに対して父親は、彼女の祖父は2人ともはるか以前に死亡していると語っていた。「ファシリテイター」は祖父たちに関する質問をしようとしたことはなかった)。その申し立てを裏付ける物的証拠はなく、その他の証拠もなかった。この両親は、ともに刑事責任を問われた−−父親は当該虐待行為に対して、母親は父親の行為を届け出なかったことに対してである。裁判での審理は10ヶ月以上に渡った。
9月15日、K. K. Peters裁判官は判決を下し、FCを使って語られた主張は、不正行為を行ったとされる人間を告発するに十分な信頼性を欠いていると述べた。これに1日遅れて、M. R. Buck裁判官はオノンダガ郡の訴訟について同様の判定を表明した。
2つ目の審理では、10歳のダウン症女児が父親を性的虐待で告発するためにFCを使用して発言したということであった。女児はわずかながら発話能力を保持していたが、彼女の発言は「ファシリテイター」を通じてのみ(と言われている)行われ、発話を通じて行われることは一度もなかった。この父親は1月に自宅から隔離されたが、さらにもしその申し立てが真実だと認められれば実刑判決を科せられる可能性があった。この事例においても、虐待に関する物的証拠はなかった。
Syracuse Herald Tribune紙によれば、当該女児の代理人として裁判所に任命された弁護士のAnnette Muirが、虐待がなかったことを確信していると語ったということである。Annetteは、次のように言った。「女児の教師はBiklenグループに「洗脳」されていたので、女児のコミュニケーションを誤解したのだ」。
FCの中心的提唱者であるDouglas Biklenは、これらの判決に失望した。The Syracrse Post-Standard紙は彼による評論を次のように引用した。「これはとても苛立たしい状況だ…なぜ障害者は否定されねばならないのか…十分な研究がなされていないからだ……彼ら自身が自ら証明できた場合であっても」。しかし、FCに関する裁判記録がアメリカよりも多数残されているオーストラリアにおいても、メルボルン大学のAlan Hudson教授の以下の意見が引用されている。「過去12ヶ月、私はずっと…における12のFCの事例をコンサルタントとして指導し、助言してきた。この中の11例は研究を終えており、被験者がファシリテイテッド・コミュニケーションを通じて意志の疎通を行うことができたと評価チームが結論づけた事例は1つもない」。Newsweek(92年9月21日号)では、いくつかの事例では、スペイン語またはヒンズー語を話している家庭の子供たちが流暢な英語で告訴を行っているらしいと報じている。
前述の自閉症女児の家族を担当した弁護人Alan Zweibelが言うには、「私の依頼者達はあの告発によりひどく傷ついている...彼らが望んでいることは、根拠もなくテストもされていない治療法を、情報操作に影響されやすい私的共同体へ高圧的に強制した人々と、関係する諸官庁に対して法的補償を求めることである」。現時点では、被告人とされた家族達が告発人に対して賠償を求めるための膨大な数の訴訟が後続することが予想される。ある全国的に知られた好評なプログラムの指導者がARRIに語ったところによれば、彼女の組織のファシリテイターと被告人との間でやがて巻き起こるであろう数多くの訴訟合戦による悪影響から自分の組織を守るために、インフォームド・コンセント用紙を用意したということである。
米国児童精神医学会議の声明が1993年10月20日に発表された。アメリカ小児科学会でも、この声明を支持している。
ファシリテイテッド・コミュニケーション(FC) とは、意志疎通困難者がキーボードやタイピング装置を使う際にその腕または手をファシリテイターが補助する方法である。この方法は自閉症者や精神遅滞者による意志疎通を可能にすると主張されている。FCについての研究では、自閉症や精神遅滞を持つ個人に対してFCが科学的に有効な技術ではないことが繰り返し立証されている。特にFCを通じて得られた情報は、虐待の申し立てを確認または否認するためや、診断または治療の判断に用いてはならない。
アメリカ精神遅滞協会 (AAMR) 運営委員会により1994年1月に採択された、Facilitated communicationに対するアメリカ精神遅滞協会の公式声明は以下の通り。
それゆえ、ファシリテイテッド・コミュニケーション(FC)とは、意志の疎通に障害のある個人がキーボードまたはタイピング装置を使うときにその腕または手をファシリテイターが補助する方法である。この方法は自閉症や精神遅滞を持つ個人の意志の疎通を可能にすると主張されている。相当数に上る客観的臨床評価および十分にコントロールされた研究によれば、現在のところファシリテイテッド・コミュニケーションによって補助される障害者から有効なメッセージが得られたという結果は示されていない。
したがって、アメリカ精神遅滞協会(AAMR)の理事会は、その文章の出所を確認するための明白で客観的な証拠のない限り、補助される個人に関連する重要な決定の根拠としてこの手法を使用することを支持しないことを決定する。AAMRは、有効な補助的手段と代替コミュニケーション手法を使用することと、これらのさらなる発展を強く奨励する。
米国精神科学会議 − アメリカ精神科学会議(APA)代表者会議は1994年8月24日に記者発表を行ったが、この発表には同会議により採択された以下の決議も含まれた。
ファシリテイテッド・コミュニケーション(FC)は、北米全土において、発語のない発達障害者に対する特殊教育および職業教育において広く採用されている。ファシリテイテッド・コミュニケーションは、自閉症で中程度または重度の精神遅滞をもつ個人に、通常の知的機能に合致する「未開発の識字能力」があることを基本的前提としている。専門家によって審査された科学的研究では、クライアントがタイピングによって書いた言葉(コンピュータ、文字盤その他を使用して表現された内容)は、補助を行っている専門のセラピストまたはその助手が方向付けたり、決定していることがわかっている(Bligh & Kupperman, 1993; Cabay, in press; Crew et.al. in press; Eberline, McConnachic, Ibel & Volpe, 1993; Hudson, Melita, & Arnold, 1993; Klewe, 1993; Moore, Donovan, Hudson, 1993; Moore, Donovan, Hudson, Dykstra & Lawrence, 1993; Regal, Rooney, & Wandas, in press; Shane & Kearns, in press; Siegel, in press; Simon, Toll & Whitehair, in press; Szempruch & Jacobson, 1993; Vasquez, in press; Wheeler, Jacobson, Paglieri & Schwartz 1993)。なお、自らが影響を及ぼしていることにセラピストたちが気づいているかどうかは、科学的にまだ検証されていない。
このため、特定の活動を行うことで、自閉症や重度精神遅滞をもつ個人の公民権や基本的人権を直接脅かす原因になることがある。それは、ファシリテイテッド・コミュニケーションを以下のような場合に、根拠として用いる場合である。a)(家族やその他の養育者による)虐待や不適切な養育について、非言語でなされる告発に関する行為、b)個人的な好き嫌い、健康状態、試験や授業中の行動、家庭環境といった事柄について、非言語でなされるコミュニケーションに関する行為、 c)標準化された査定手続きを用いて行われる心理学的アセスメントでの、クライアントの反応、d)治療を開始したり、これまでと異なる処遇を行う決定をする場合に実施するカウンセリングや心理療法での、クライアントとセラピストとのコミュニケーション。他の方法では証拠立てられない虐待を告発するためにファシリテイテッド・コミュニケーションが使われた場合、当事者の家族や養育者が精神的苦痛、疎外、または経済的困窮を被るということは、さまざまな事例によって示されている。この手法が未だ実験段階で実証されていないという状況は、ファシリテイテッド・コミュニケーションの有用性や、これに関連する科学的問題について研究を継続することを排除するものではない。ファシリテイテッド・コミュニケーションを使用する臨床行為においては、まずその潜在的リスクと得られうるメリットとの双方に関して十分なインフォームド・コンセントの手順を踏むべきである。
ファシリテイテッド・コミュニケーションとは、意志疎通が困難な個人がキーボードやタイピング装置を使うときに、その腕または手をファシリテイター(補助者)が支える方法である。この方法は自閉症や精神遅滞を持つ個人による意志の疎通を可能にすると主張されている。諸研究では、自閉症者や精神遅滞者にとって、ファイシリテイテッド・コミュニケーションは科学的妥当性の認められた技術ではないことが繰り返し立証されてきた。特に、ファイシリテイテッド・コミュニケーションによって得られた情報は、虐待に対する告発を証明または否定するためや、診断や処遇決定において使用されてはならない。
したがってここに米国心理学会は、ファシリテイテッド・コミュニケーションには、その有効性を裏付ける科学的証拠がなく、賛否両論があり、実証されていない意思伝達手順であるという立場をとることを決議する。
原文:
Facilitated communication: Courts say "No"
(ASAサイトに該当文書は現在存在しない。原文リンクは
The Review 内)
翻訳:詠み人知らず
初出サイト:Facilitated Communication と Doman Method 海外文献翻訳資料集
掲載者:「奇跡の詩人」検証文献翻訳班@2ちゃんねる
更新履歴:2002年6月27日 試験公開にて初出